- 急な重病になってしまった
- ひどいけがをした
そのような時には、119番に電話をして救急車を要請すれば応急手当を行いながら患者の症状にあった病院に搬送してもらえます。
日本の救急システムはとても心強くありがたい制度ですが、救急車を要請した場合にはその費用を払わなければならないのでしょうか?
救急車を要請して費用を請求されたという話もありますが、もし本当なら緊急時でも救急車の要請をためらってしまいそうですね。
今回は救急車の費用について考えてみましょう。

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救急車を利用するだけなら費用はかからない
実は、救急車を呼んで病院やけが人を病院に搬送するのには費用はかかりません。
救急車は税金で運用されている公共のサービスですから、費用を請求されることはないのですね。
日本の救急車は、病人やけが人の人種や国籍、また納税しているかどうかに関係なく無料で利用できるという点で非常に優れています。
外国からの観光客が利用しても、また、無保険の人が利用しても費用がかからないので、緊急性の高い病気やけがをしたときも安心です。
救急車の費用を請求されるケースとは?
救急車を利用してもその費用は無料のはずですが、救急車を要請したために費用を請求されたという人がいるとも聞きます。
それはどうしてなのでしょうか?
軽症・緊急性がないと判断された場合
費用がかからないはずの救急車で搬送された場合でも、費用を請求されるケースが確かにあるようです。
例えば、100床以上の大病院に救急車で搬送された場合、軽症である、あるいは緊急性がないと判断されれば、病院から「特定療養費」を請求される可能性があります。
特定療養費とは、大病院が一定のルールのもとで各自自由に定めて請求できる費用をいいます。
大病院は高度で専門的な医療を行う目的で設置されているので、軽症者が集中するのを防ぐために、他の病院などからの紹介状を持たない患者に対しては特定療養費を請求できるのです。
本来は、救急搬送された緊急性の高い患者に対して特定療養費を請求することはありませんが、緊急性が高くない軽症の患者には特定療養費を請求できると判断するケースもあるでしょう。
つまり、これは救急車を呼んだ費用を請求されたのではなく、軽症者の診療をしたとして病院が患者に特定療養費を請求したのですね。
ドクターカー内で治療を受けた場合
患者を病院に搬送する救急車ではなく、医師や看護師を現場に運ぶドクターカーを利用して車内で治療を受けた場合も、やはり費用が発生します。
病人やけが人が心肺停止など一刻を争うような状況に置かれている場合は、119番の判断で救急車ではなくドクターカーが現地に向かうことがあります。
【救急車とドクターカーの違い】
救急車 | 救命救急士が乗っている |
---|---|
ドクターカー | 医師や看護師が乗っている |
救急車には救命救急士が乗っていて医師の指示のもとに救急救命の処置を行いますが、ごく一部を除いて医療行為は行えません。
一方、ドクターカーには医師や看護師が乗車していますから、車内で医療行為を行うことが可能です。
車内で医療行為が行われれば、病院で治療を受けるのと同じように健康保険適用の料金が発生しますが、ドクターカーでの病人やけが人の搬送自体は救急車と同様に無料です。
救急車の費用の有料化が検討されているって本当?
救急車が無料で病人やけが人を搬送することは、日本では当たり前のサービスだと考えられています。
しかし、海外では日本とは異なって、救急車を利用すれば費用が発生するのが当たり前という考え方が浸透しており、無料で救急車を呼べる日本の制度は非常に珍しいようです。
しかし、その救急車の費用を有料化するかどうかについて、しばらく前から検討されていることを知っていますか?
救急車の出動件数は年々増加している
2018年の救急車の出動件数は660万5,166件、搬送人数は596万202人で、出動件数の搬送人数も前年比で約4%増加しています。
救急出動件数 | 増加率 | 搬送人数 | 増加率 | |
---|---|---|---|---|
1998年 | 3,701,315件 | ― | 3,545,975人 | ― |
2003年 | 4,830,813件 | 30.5% | 4,575,325人 | 29.0% |
2008年 | 5,097,094件 | 5.5% | 4,678,636人 | 2.3% |
2013年 | 5,915,683件 | 16.1% | 5,346,087人 | 14.3% |
2018年 | 6,605,166件 | 11.7% | 59,60,202人 | 11.5% |
では、救急車で搬送される原因となった事故の種別を見てみましょう。
急病 | 交通事故 | 一般負傷 | 転院搬送 | その他 | |
---|---|---|---|---|---|
1998年 | 55.7% | 16.9% | 12.2% | ― | 15.2% |
2003年 | 58.4% | 13.7% | 12.7% | 9.2% | 6.0% |
2008年 | 60.9% | 10.9% | 13.7% | 8.8% | 5.7% |
2013年 | 63.1% | 9.1% | 14.4% | 8.3% | 5.1% |
2018年 | 65.0% | 7.0% | 15.1% | 8.2% | 4.7% |
交通事故による搬送は1998年から2018年の20年間で約10%減っていますが、急病による搬送は約10%増加していますし、一般負傷による搬送も約3%増加しています。
軽症者の利用が約半数を占めている
実は、救急車で搬送される人のうち、軽症の人が占める割合は半数程度にも上るといいます。
この傾向はここ20年ほど変わりません。
症状の軽重を判断するのは難しい
傷病者の症状が軽いか重いかを判断するのは難しいです。
救急搬送の必要はなかったのではと思えるケースでも、よくよく精密検査をしてみたら重症だと診断される場合もあります。
また、見た目には重症だったので救急車で搬送したけれども、搬送先の病院で治療をしたら入院するほどではなかったという事例もありますから、傷病者の見た目だけで症状を判断するのは危険だといえます。
安易に救急車を利用する人が増加している
一方で、明らかに軽症である、あるいはそもそも病気やけがですらないなど、緊急性もないのに救急車を利用する人が増えているのも事実です。
- 病院で長く待つのは嫌だから救急車を呼んだ
- 歯が痛くて我慢できなくなった
- 日焼けがヒリヒリする
- 子供が調理実習で指を切った
- 風邪薬が欲しい
- タクシーが捕まらないから救急車を呼んだ
などの理由で救急車を利用するもいると聞くと、いろいろと考えさせられてしまいます。
急病で搬送される人や一般負傷で搬送される人が増加しているのは、このようなことも関係しているといえそうです
同じ人が何度も救急車を呼ぶ「頻回利用」も問題に…
また、重症でもなく緊急度が低いにもかかわらず、救急車を頻繁に利用する人が増加している問題も見過ごせません。
例えば、2014年の消防庁の調べでは、1年間に10回以上救急車を呼んだ人が全国に2796人もおり、そうした救急車の頻回利用者だけで年間5万2,799回も救急車の出動を要請しているそうです。
年間50回以上救急車を呼んでいる人は250人ほどにおり、なかには年間200回も救急車を呼んだ人もいるといいます。
本当に救急車を利用すべき重傷者が利用できない!
しかし、このような理由で救急車が出動してしまうと、本当に救急車で搬送されなければならない人が利用できなくなってしまいます。
実際、救急車の現場到着所要時間や、傷病者の病院収容所要時間は年々長くなってきているといいますから、問題は深刻です。
1997年 | 2017年 | |
---|---|---|
現場到着所要時間 | 6.1分 | 8.6分 |
病院収容所所要時間 | 26.0分 | 39.3分 |
表を見ると、
- 軽症者が救急車を安易に利用する
- 同じ人が何度も救急車を呼びつける
そうしたことが影響して救急車が効率よく出動できなくなってきていることがよくわかります。
救急車の出動には多大な費用がかかる
救急車が出動すると1回あたり4万5,000円程の費用がかかります。
その内訳は、
- 救急隊員の人件費
- 救急車のガソリン代・メンテナンスにかかる費用
- 治療に使用する医療器具にかかる費用
などです。
救急車は年間に660万回も出動していますから、単純計算しても救急車の出動だけで3兆円近くもかかっていることになります。
これらを全て税金からまかなっているわけですが、本来の目的通りに利用していればこれほど経費がかさむことはないはずです。
2015年に救急車の有料化が検討されている
2015年5月に開かれた財政制度等審議会では、軽症者が救急車を利用した場合にはその費用を請求することにしてはどうかとの提案がありました。
現在のままではいずれ救急サービスに限界がきてしまうというのが理由です。
本当に救急搬送が必要な人が確実にサービスを利用できるようにする、また、急増している救急関連の経費を削減するには、確かに何らかの対策を立てなければならないでしょう。
救急車の費用を有料化するかどうかについては議論が続けられていますが、現在のところ、はっきりしたことは決まっていません。
海外では救急車の費用が請求されるケースが多い
現在、日本では救急車の費用は無料ですが、海外の救急車事情はどうなっているのでしょうか?
救急車の費用がかかる国
救急車を呼ぶと費用がかかる国や都市を見てみましょう。
アメリカ | ニューヨーク:約27000円 ロサンゼルス:約46000円 |
---|---|
カナダ | バンクーバー:約45000円 トロント:約34000円 |
オーストリア | ウィーン:約67000円 |
フランス | 基本料金約7500円 1kmあたり250円加算 |
ドイツ | ミュンヘン:約67000円 |
オーストラリア | 50km内なら約97000円 その後1kmあたり約1400円加算 |
中国 | 北京:約6500円上海:約4500円 |
ベトナム | ホーチミン:約1400円 |
シンガポール(病気の時) | 約14000円 |
救急車を呼べば費用がかかるというのが世界標準です。
ただ、救急車は無料なのが当たり前だと思っている日本人からすると、かなり高い費用を請求されるのだなという印象を受けますね。
救急車の費用がかからない国
一方、救急車の費用がかからない国は少数派です。
イギリス(民営は有料) |
スウェーデン |
イタリア(民営は有料) |
ブラジル |
シンガポール(事故時) |
救急車の費用が無料といわれる国でも、実は状況によっては費用を請求されることがあるというのが一般的なのですね。
救急車を呼んでも全く費用がかからない日本の救急サービスは、かなり特殊だといえるでしょう。
救急車の有料化のメリット・デメリット
では、救急車の費用を有料化するとどのようなメリットやデメリットがあるでしょうか?
救急車有料化のメリット
救急車を有料化すると、次のようなメリットがもたらされます。
人員不足を解消できる
救急車の費用が有料になることで軽症者の利用が減れば、救急医療にかかわるスタッフの負担を抑えられます。
現在救急医療の現場はパンク寸前ですが、軽症者の救急搬送の多さが原因の一つとなっているのは間違いのないところでしょう。
救急車の費用が有料になって安易な利用が減れば、その分、救急医療現場の人手不足が解消されます。
重症患者をより早く搬送できるようになる
軽症者が安易に救急車を利用しなくなって救急医療スタッフの不足が解消されれば、救急車を呼んでから到着するまでの時間も短縮されます。
救急車を利用するのが重症患者のみになれば、助かる命がこれまでよりうんと増えるはずです。
これが本来目指したい救急医療ではないでしょうか?
消防関係費用を軽減できる
軽症者の救急車利用に費用がかかるようにすれば、税収は増えるでしょう。
また、増加し続ける消防関係費の抑制にもつながります。
その分、救急サービスの拡充に投資できれば、より質の高いサービスを提供できるようになり、多くの人命救助に貢献できるはずです。
救急車有料化のデメリット
救急車の費用を有料化すると、どのようなデメリットが生じるのでしょうか?
経済的弱者が救急車を利用することをためらう可能性がある
救急車の費用を有料化すると、どんなに重症で一刻も早い搬送が必要な傷病者でも、経済的に余裕がなければ救急車の利用をためらうでしょう。
搬送が遅れたことで救えたはずの命が失われてしまう、あるいはより重症化したことで医療費の負担が増えてしまうといったことが増加するかもしれません。
逆に救急車の出動が増える可能性もある
救急車が有料になると、お金さえ払えば救急車を呼んでかまわないだろうと考える人が増える可能性があります。
これまで「救急車は無料だから緊急性が高くなければ利用してはいけない」と、救急車の利用を控えていた人が「お金を支払えば救急車を呼んでも構わないだろう」と考えてしまうのではないかということです。
救急車を有料化することで救急車を利用するハードルが下がってしまえば、逆に救急車の出動回数はこれまでよりも増えてしまうかもしれません。
「モンスター利用客」の増加も懸念される
さらに、お金を払って救急車を利用することで「お金を払っているのだからもっと急げ」「早くしろ」などと横柄な態度をとる人が増えるのではないかという心配が出てきます。
現在でも、「自分たちが払った税金で運営されているサービスなのだから、利用するのは当然の権利」という態度で救急車を利用する人が少なくありません。
このように考える人が救急車の費用を払って利用すれば、どうした態度をとるかは明らかでしょう。
結局、一人一人が良識のある利用に努めなければ、救急車の有料化問題を根本的に解決することは難しいのです。
おわりに
救急車の費用を利用者から徴収するかどうかについては、賛否両論あります。
さまざまな問題があるため早急に決着をつけるのは難しそうですが、今のままでは医療現場は崩壊してしまうでしょう。
利用する側が「救急車は緊急性が高いときにのみ利用すべきサービスである」ことをしっかりわきまえることが重要です。
皆さんも、節度を持って救急車を利用してください。
