近年資産運用への関心が高まっていますが、なかでも不動産投資はコロナ禍を経ても引き続き好調を維持しており、注目度は年々高まっています。
「ニッセイ基礎研究所」と、「価値総合研究所」による2023年の共同調査によると、日本における「収益不動産」の資産規模は約289.5兆円(前回比+13.9兆円、+5.1%)と推計されています。
その中でも身近な不動産投資の対象である「賃貸住宅」は「オフィス」次いで2番目の規模となっており、約77.1兆円と全体の27%を占めています。
さらに過去2年の調査結果と比較すると、「賃貸住宅」の資産規模は2021年から2022年は+7.1、2022年から2023年は+5.1%と右肩上がりです。
※「ニッセイ基礎研究所」…経済・金融・財政をはじめとして、社会保障、資産運用、不動産、経営・ビジネス、暮らし、高齢社会といったさまざまな分野において調査・研究活動を行う
※「価値総合研究所」…ビジネス、市場、企業価値、社会システムなどのあらゆる「価値」に関するリサーチ&コンサルティングを行う
そこでこの記事では、不動産投資についての基本的な仕組みやメリット・デメリットについて解説します。
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不動産投資とは
不動産投資は、物件を購入し、それを賃貸することで家賃収入を得る投資手法です。
年金対策や資産形成として20代や30代から始める人も多く、特に老後の安定した収入源としての需要が高まっています。
不動産投資は低リスクで安定感のある投資法
不動産投資は、ミドルリスク・ミドルリターンのカテゴリーに分類されることが一般的です。
株式投資やFXといった投資と比較して、賃料収入は比較的安定しているため、収益の波が少ないのが特徴です。
爆発的な利益というのはありませんが、リスクを抑えつつ安定した収益を求める方に適しています。
不動産投資で利益が出る仕組み
不動産投資は、家賃収入や売却益を通じて利益を得る手法です。
賃貸市場や不動産市場の状況を観察すること、そしてインカムゲインとキャピタルゲインという2つの主要な利益源を理解し、それぞれの特徴とリスクを考慮しながら、長期的かつ安定的な収益を目指します。
市場の変動や物件の状態に応じて柔軟に対応することで、両方の利益源から利益を得ることも可能です。
- インカムゲイン(家賃収入)
- キャピタルゲイン(売買益)
インカムゲイン(家賃収入)
不動産を所有し、そのスペースを他人に貸し出すことで得られる定期的な家賃収入をインカムゲインと呼びます。
これは、景気の波に比較的影響を受けにくい安定した収入源とされています。
ただし、管理費や修繕費、ローン返済などの出費を差し引いた後の純利益が実際の収益となるため、これらのコスト管理が不動産投資のキャッシュフローを左右します。
キャピタルゲイン(売買益)
不動産投資のもう一つの利益源は、物件の価値が購入時よりも上昇したことによる売却益、つまりキャピタルゲインです。
不動産市場の価格動向やエリアの発展によって、物件価値が上昇することを見込んで投資を行います。
バブル期にはキャピタルゲインを狙った投資が主流でしたが、現在は家賃収入を安定的に得るインカムゲイン重視の動きも見られます。
しかし、市場の変動により価格が下落するリスクもあるため、慎重な市場分析と戦略が求められます。
代表的な不動産投資
不動産投資は多様な方法が存在しますが、特に人気のある投資手法に区分マンション投資と一棟マンション投資(一棟アパート投資)があります。
これらは投資の初期費用、管理のしやすさ、収益性の面で異なり、投資家の資金力や経験、目指す投資スタイルによって選択されます。
- 区分マンション投資
- 一棟マンション投資(一棟アパート投資)
区分マンション投資
区分マンション投資は、マンションの一室を個別に購入し、それを賃貸に出す方法です。
特にワンルームマンションの投資は初期投資が少なく済むため、初心者にも手が出しやすく、不動産投資の第一歩として人気です。
また、一部屋単位での投資のため、管理や販売が比較的容易で、空室リスクも一室ごとに限定されます。
一棟マンション投資(一棟アパート投資)
一棟マンション投資または一棟アパート投資は、建物全体を購入して運用する投資方法です。
この手法では、複数の賃貸ユニットを管理することになり、区分マンション投資よりも高い収益を期待できますが、それに伴い初期投資や維持管理のコストも大きくなります。
全体の管理を行うため、空室リスクやテナント管理、物件のメンテナンスに関する責任も大きくなります。
不動産投資への目的別アプローチ方法
不動産投資は多様なアプローチが可能で、投資家の目的や資産状況に応じて適した戦略が変わります。
資産運用の最大化、リスク分散、節税等の目的に応じて、以下のようなアプローチを考えることができます。
- 最小限のリスクで資産運用したいなら「慎重型」
- リスク分散目的なら「バランス重視型」
- 所得税率対策をしたいなら「節税型」
最小限のリスクで資産運用したいなら「慎重型」
リスクを最小限に抑えつつ資産運用を行いたい場合、不動産の将来的な需要予測、金融機関の融資条件、金利、修繕やメンテナンス費用などを詳細に分析し、全体的な収益性を慎重に評価します。
このタイプでは、大きな利益を追求するよりも、失敗を避けることに重点を置き、堅実な投資を心がけます。
リスク分散目的なら「バランス重視型」
複数の地域や物件タイプに投資することでリスクを分散したい投資家には、バランス重視型のアプローチが適しています。
異なる地域や異なるタイプの物件への投資により、市場や需要の変動に対して強いポートフォリオを構築できます。
また、不動産投資信託(REIT)に投資することで、少額からでも複数の物件へ分散投資を行い、リスクをさらに広げることが可能です。
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所得税率対策をしたいなら「節税型」
所得税率が高く、税負担を軽減したい投資家には、節税型のアプローチが有効です。
不動産投資によって不動産所得を一時的に赤字にし、所得税額を抑える戦略を取ることができます。
特に減価償却費の計上により、課税対象となる所得額を減少させることが可能です。
築年数が進んだ物件を購入し、減価償却費を活用することで、節税効果を最大限に引き出します。
不動産投資のメリット
不動産投資のメリットは、自己資金以上のお金を活用した投資ができること、節税効果の最大化、そして安定した収入源の確保など多岐にわたります。
他の投資方法にはない独自のメリットが多数ありますので把握しておきましょう。
- レバレッジをかけて投資できる
- 所得税・住民税の節税効果を期待できる
- 収入が安定しやすい
- 老後のための資産形成に向いている
- 家族に資産を残せる
- 相続対策になる
- 副業扱いにならない
- インフレリスクに強い
レバレッジをかけて投資できる
不動産投資の大きな魅力の一つは、金融機関の融資を活用して、自己資金以上の投資が可能な点です。
これにより、少ない自己資金でも大きな資産を手に入れることができ、「レバレッジ効果」により収益性を高めることができます。
所得税・住民税の節税効果を期待できる
不動産投資は、特に開始当初に節税効果が期待できます。
不動産取得時にかかる諸経費を経費に計上することで、家賃収入よりも経費が上回り、不動産事業は赤字となることが多いです。
この赤字分は給与所得などと相殺でき、所得税額を減らすことが可能です。
減価償却費の計上や損益通算の利用により、課税対象所得を減らし、所得税や住民税を減額できるのも大きなメリットです。
収入が安定しやすい
不動産投資は、株やその他の投資商品と異なり、毎月安定した家賃収入が見込める点が大きな利点です。
未来の収入計画が立てやすく、副業としても始めやすいです。
ただし、収入を安定させるためには、適切な立地選びや物件の選定が重要であり、空室リスクや利回りの低さなどには注意が必要です。
適切な物件選びと管理により、安定した収入源として不動産投資を活用することができます。
老後のための資産形成に向いている
不動産投資は、ローン返済後に安定した家賃収入を得られることから、老後の資産形成に非常に適しています。
将来の年金収入だけでは不足する生活費を補うため、老後のための資産形成手段として不動産投資は多くの人に選ばれています。
家族に資産を残せる
不動産投資は、家族に対する保護手段としても機能します。
団体信用生命保険(団信)に加入することで、投資家が亡くなった場合や重い病気にかかった場合でも、ローン残高が免除され、家族は物件を引き継いで家賃収入を得ることができます。
これにより、家族は経済的な安定を保つことができ、投資家本人も安心して投資を行うことができます。
相続対策になる
不動産投資は、相続税対策としても非常に有効です。
現金と比較して、不動産の相続税評価額は低く設定されることが一般的です。
固定資産税評価額を基準とした評価により、同額の現金を相続する場合に比べて、相続税額を減らすことが可能です。
このため、相続税の負担を軽減しつつ、家族に資産をしっかりと引き継ぐことができます。
副業扱いにならない
会社員が副収入を得ようとする際、多くの企業が副業を禁止している中、不動産投資はその制限の対象外とされることが多いです。
副業禁止の会社に勤めていたとしても、不動産投資なら安定した副収入をを確保できる可能性があります。
ただし、企業によって方針が異なるため、不動産投資を始める前に勤務先との事前相談は重要です。
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インフレリスクに強い
インフレ時の物価上昇は現金やその他の金融資産の実質価値を下げる一方で、不動産投資はインフレに強い特性を持ちます。
実物資産である不動産は、物価上昇とともに価値が増す傾向にあり、購入時に借り入れたお金の実質的価値は時間とともに減少します。
このため、不動産投資はインフレ時でも資産価値を保つ強いヘッジとして機能し、長期的な資産保全と成長を期待できるメリットがあります。
不動産投資のデメリット
不動産投資は魅力的なメリットが数多くありますが、他の投資方法と同様に、特有のデメリットも理解しておくことが重要です。
特に初期費用、流動性、そして空室リスクは、不動産投資を考慮する際に慎重に検討すべき要素です。
- まとまった初期費用がかかる
- 投資の中でも流動性が低い
- 空室で収入減の可能性がある
- 入居者による家賃滞納のリスクがある
- 建物管理費や賃貸管理費(ランニングコスト)がかかる
- 価格変動によるリスクがある
- 金利変動によるリスクがある
- 固定資産税・都市計画税がかかる
- 天災で建物がダメージを受けるリスクがある
まとまった初期費用がかかる
不動産投資を開始する際、ローンを組んで購入する場合であっても、初期費用が必要です。
例えば、物件の所有権移転のための登記費用や売買契約書に必要な印紙税などが必要です。
購入費用は不動産価格の一部ですが、それでも相応の自己資金を用意する必要があります。
投資の中でも流動性が低い
不動産は、株式など他の投資商品に比べて流動性が低いです。
売却を決断してから実際に取引が成立するまで、数週間から数カ月の時間が必要なことが一般的です。
これは、不動産の売買プロセスが複雑で時間を要するためであり、市場の状況や物件の特性によってはさらに時間がかかることもあります。
空室で収入減の可能性がある
不動産投資の収入は、入居者からの家賃に依存しています。
そのため、空室が発生すると収入が途絶え、特にローンを利用している場合は返済負担が重くのしかかることになります。
空室リスクを減らすためには、物件の魅力を高めるための継続的なメンテナンスやアップグレード、または需要の高いエリアでの物件選びが重要です。
入居者による家賃滞納のリスクがある
家賃滞納は不動産投資の大きなリスクの一つです。
入居者が家賃を支払わない場合、収益は直接影響を受けるだけでなく、貸主としての精神的なストレスも発生します。
家賃の回収は賃貸管理会社に任せることで、このようなリスクを軽減することが可能ですが、滞納が長引くほど回収率が低下する可能性もあるため、早急な対応が必要です。
建物管理費や賃貸管理費(ランニングコスト)がかかる
不動産を保有すると、購入後も継続して建物管理費や賃貸管理費などのランニングコストが発生します。
例えば共用部分の清掃、エレベーターの定期点検、大規模修繕、設備の交換費など、入居者の快適な生活を維持するための費用や、原状回復などの費用が含まれます。
物件の価値を維持し、長期的な収益性を保つために必要なものです。
価格変動によるリスクがある
不動産投資は、市場の状況や物件の特性によって価格が変動するリスクがあります。
特に、築年数が経過した物件は、売却時の資産価値が大幅に減少する可能性があります。また、所有期間によって売却時の税金も変わり、短期間での売却は高い税率が適用される可能性があるため、売却戦略には慎重な計画が必要です。
メンテナンスやリフォームを適切に行い、良好な立地や将来性のあるエリアの物件を選ぶことで、価格変動リスクをある程度管理することができます。
金利変動によるリスクがある
不動産投資ローンを利用する際、金利の変動は返済計画に大きな影響を与える要素の一つです。
特に変動金利を選択した場合、金利が上昇すると返済額も増加し、予定外の財務負担を招く可能性があります。
固定資産税・都市計画税がかかる
不動産を保有している限り、固定資産税や都市計画税といった税金が毎年発生します。
これらの税金は、物件が空室状態であっても納付が必要です。
特に、土地や建物の価値に基づいて計算されるこれらの税金は、資金計画の重要な部分を占めるため、長期的な資金流出として計画に含める必要があります。
天災で建物がダメージを受けるリスクがある
自然災害は予測不可能であり、地震、台風、洪水などにより不動産が甚大なダメージを受ける可能性があります。
天災で建物がダメージを受けると、建物の修復費用が発生するだけでなく、最悪の場合は建物が使用不可となり家賃収入が途絶えることもあります。
不動産投資に向いている人の特徴
不動産投資は特定の条件や特徴を持つ人に特に適しています。
安定した収入、まとまった貯蓄、そして長い勤続年数は、不動産投資において有利な要素となり得ます。
- 安定した収入がある人
- まとまった貯蓄がある人
- 勤続年数が長い人
安定した収入がある人
安定した収入を得ている人、特に大企業の会社員や公務員などは、不動産投資に非常に適しています。
安定した収入があることは、金融機関からの信用を得やすく、ローンの審査にも通りやすいためです。
まとまった貯蓄がある人
不動産投資は初期費用の他にも、ランニングコストが発生します。
これには、管理費、リフォーム費用、税金などが含まれます。
そのため、入居者が長期間いないなどの不測の事態に備えて、ある程度の余剰資金を確保しておくことが重要です。
勤続年数が長い人
勤続年数が長い人は、安定した収入が見込め、将来的にも収入が保証されていると見なされやすいです。
不動産投資における融資の借入れにおいても、金融機関から好意的に評価される可能性が高くなります。
不動産投資に向いていない人の特徴
不動産投資は一部の人には大きなメリットをもたらす可能性がありますが、すべての人に適しているわけではありません。
特に、利益を急ぎたい人、安定した収入がない人、信用力が低い人、また不動産市場の動向に敏感になれない人には、不動産投資はリスクが高いと言えるでしょう。
- すぐに利益が欲しい人
- 収入が少ない人・安定しない人
- 延滞や債務整理をして信用がない人
- 不動産投資の情報にアンテナを張れない人
すぐに利益が欲しい人
不動産投資は長期的な視点での利益を見込む投資です。
短期間で大きなリターンを期待する場合、不動産投資の価格変動の性質上、期待に応えられないことが多いです。
収入が少ない人・安定しない人
不動産投資では、特に初期費用や維持費用、さらにはローン返済のための安定した収入が求められます。
年収が不安定、または勤続年数が短い、非正規雇用の方は、金融機関からの融資を受けることが難しく、不動産投資を始めること自体が困難になる可能性があります。
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延滞や債務整理をして信用がない人
過去に金融事故を起こしている方は、不動産投資ローンの審査に通ることが難しいです。
信用情報に記録された延滞や債務整理の情報は、金融機関が貸し倒れリスクを判断する重要な要素です。
このような過去がある場合、ローンの審査を通過しにくくなります。
不動産投資の情報にアンテナを張れない人
不動産投資は継続的な市場の動向の把握や、最新の法規制の情報を把握していることが重要です。
投資の勉強を継続できない、または世界経済全般に関心がない方は、不動産投資のリスクを正しく管理し、最適な投資判断を下すことが難しくなる可能性があります。
不動産投資は長期的な資産形成に最適
不動産投資の基礎知識やメリット・デメリットについて解説しました。
不動産投資は空室リスクや価格変動リスクなど、いくつかの注意点もあります。
しかし、安定した収入を長期的に期待できる点や、節税効果を期待できるというようにメリットも多い投資方法です。
また不動産投資のような長期投資は、早く初めてなるべく運用期間を長く確保することが利益ん最大化にもつながります。
少しでも興味がある場合は、不動産投資を検討してみてください。