生活をする上でお金を稼ぐことは基本ですが、勤労以外にも国や自治体からの補助金を活用する方法があります。
これらの補助金は、特定の状況にある人々を支援するために設けられています。
その一例が「生活保護制度」です。この制度は、貧困に苦しむ人々に対して経済的な支援を提供し、生計を立てるための助けを与えます。
このような制度は国が社会的な問題を解決し、市民の生活を保護するために設けられています。
しかし、こうした制度の存在や詳細については、自治体から積極的に案内されることは少ないため、利用者自身が情報を探し出し、自分に合った支援を見つけ出す必要があります。
この記事では、補助金やその他の支援制度を活用して経済的な援助を受ける方法について解説します。
出産時、子育てに関する手当金・補助金
まずは出産時や子育て時に関する補助金を紹介していきます。
少子高齢化が進んでいる日本にとっては、なるべくなら子どもを増やしていきたいのでこのような制度があるのでしょう。
ここで紹介する補助金は次の通りです。
- 出産育児一時金
- 出産手当金
- 児童手当
- 子育てファミリー世帯居住支援
ひとつずつ見ていきましょう。
①出産育児一時金
出産育児一時金は、被保険者やその被扶養者が出産した際に受けられる給付金です。
給付額は、産科医療補償制度に加入している医療機関で出産したか、未加入の医療機関で出産したか、そしてその出産が令和5年4月1日以降か、それ以前かによって異なります。
産科医療補償制度とは、分娩関連の重度脳性麻痺を持つ赤ちゃんが迅速に補償を受けられる制度で、出産を行う医療機関が参加するものです。
出産時期と医療機関の加入状況 | 令和5年4月1日以降 | 令和4年1月1日~3月31日 | 令和3年12月31日以前 |
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産科医療補償制度に加入 | 1児につき50万円 | 1児につき42万円 | 1児につき42万円 |
産科医療補償制度に未加入 | 1児につき48.8万円 | 1児につき40.8万円 | 1児につき40.4万円 |
直接支払制度とは、出産前に医療機関と被保険者が契約を結ぶことで、医療機関が代わりに出産育児一時金の申請を行い、医療機関へ直接給付金が支払われる制度です。
これにより、医療機関での高額な出産費用を被保険者が直接支払う必要がなくなります。
給付金が出産費用より少ない場合、差額が被保険者に支給されます。
②出産手当金
項目 | 内容 |
---|---|
支給期間 | 出産予定日前42日から産後56日まで (多胎妊娠時は出産予定日前98日から)、出産が予定日より遅れる場合はその期間も含む |
1日当たりの支給額 | 過去12ヶ月の標準報酬月額平均 ÷ 30日 × (2/3) |
支給額の計算 | 支給額 > 給与 ならば、支給額 – 給与が出産手当金として支給 |
対象者 | 健康保険の被保険者本人 |
申請手続き | 健康保険担当者や組合窓口に確認 |
出産手当金とは、女性労働者が出産のために休職し、給与の支払いを受けなかった際に、健康保険から支給される金額です。
具体的には、出産の日または予定日前から42日(多胎の場合は98日前)始まり、出産の翌日から56日間が支給の対象となります。
もし出産が予定日より遅れた場合、遅れた期間も含まれます。1日当たりの支給額は、過去12ヶ月の標準報酬月額を30で割ったものの2/3に相当する金額となります。
支給金額と実際の給与の間に差が生じた場合、その差額が出産手当金として支給されます。
この制度の対象者は、健康保険の被保険者であり、詳しい申請手続きについては勤務先の健康保険担当者や組合の窓口で確認することができます。
③児童手当
項目 | 内容 |
---|---|
目的 | 児童の健やかな成長を支援し、家庭の生活安定に寄与する。 |
支給対象 | 0歳~中学校卒業までの児童を養育する者 |
支給額 |
|
特例給付 | 所得が一定額以上の場合:一律5,000円/月 |
支給時期 | 毎年6月、10月、2月(前月分までの手当) |
徴収制度 | 保育料や学校給食費などが市区町村から徴収可能。実施の有無は自治体による。 |
児童手当は、児童の健全な成長と家庭の安定を支援するための制度です。
基本的に、中学校卒業までの児童を養育している方が対象となります。支給額は、児童の年齢や家庭の所得により異なります。
特に、第3子以降の子どもについては、特別な支給額が設定されています。毎
年の6月、10月、2月に前月分までの手当が支給されます。一部の市区町村では、この手当から保育料や学校給食費を徴収することが可能ですが、これは各自治体の判断によります。
また、児童が日本国内に居住している場合や一定の要件を満たしている場合、海外での留学中でも支給が行われます。
離婚や別居、施設入所などの特別な状況においても、適切な支給先が定められています。
また、2024年12月支給分より、児童手当の支給対象や第3子への金額が拡充される予定です。制度施行次第、当サイトでもご案内いたします。
④子育てファミリー世帯居住支援
自治体 | 詳細 |
---|---|
福島県石川町 | 新築住宅助成:70万円 |
岩手県北上市 | 新築・改築助成:上限30万円 |
広島県三次市 | Uターン者の家業継承等の転居支援 |
福井県福井市 | U・Iターン世帯の空き家取得費用や家賃補助 |
新宿区 | 転入助成:最大36万円、引っ越し助成:最大20万円 |
世田谷区 | 中堅所得層への月4万円最長5年支給(賃貸新規入居・所得基準等条件あり) |
子育てファミリー世帯居住支援は子育てを行う世帯の転入や転居の負担軽減を目的とした制度で、自治体ごとに提供されています。
上記の例を挙げると、福島県石川町では、新築住宅取得時に70万円、岩手県北上市では新築や改築の費用として上限30万円の助成が設けられています。
また、U・Iターン者の取組み支援として、広島県三次市や福井県福井市では転居や空き家取得の助成が行われています。
都市部でも、東京都新宿区では、区外からの転入や区内転居の際に転居一時金や引っ越し費用の助成が行われています。
最大で転入時には36万円、引っ越し時には20万円の支給があるようです。また、世田谷区では、中堅所得層のファミリー世帯を対象に、月4万円を最長5年間支給する制度が設けられています。
怪我や病気などの際の医療に関する手当金・補助金
前の章では、出産や子どもに関する補助金について解説しました。
続いて怪我や病気をしたときに受給できる、医療に関する補助金について見ていきましょう。
このような制度は次の3つがあります。
- 高額療養費制度
- 傷病手当金
- 障害年金
これらは病院代や薬代などの医療費が年間で高額になった場合や、病気や怪我で仕事に支障をきたすようになった場合に支給されるものです。
こちらもひとつずつ見ていきましょう。
①高額療養費制度
対象となる人 | 自己負担上限額 |
---|---|
住民税非課税の人 | 35,400円 |
年収約370万円未満の人 | 57,600円 |
年収約370万円〜約770万円未満の人 | 80,100円+(医療費-267,000円)×1% |
年収約770万円〜約1160万円未満の人 | 167,400円+(医療費-558,000円)×1% |
年収約1160万円〜の人 | 252,600円+(医療費-842,000円)×1% |
高額療養費制度は、医療費の自己負担が一定の上限額を超えた場合に、その超過分を支給する制度で、上記の金額が適用されるのは69歳以下の世代です。
この制度の目的は、医療費の窓口での高額な支払いによる家計への負担を軽減することにあります。
自己負担の上限額は、年齢や所得によって異なります。具体的には、70歳以上と69歳以下の2つのカテゴリーに大きく分けられ、さらにその中で月収や年間の課税所得によって細かく分類されています。
例えば、70歳以上の方で年収約1,160万円以上の場合、月の上限額は約25万2,600円+(医療費-84万2,000円)×1%となります。
一方、69歳以下の方で、年収約370万円以下の場合は5万7,600円となります。
ただし、高額療養費制度の対象となるのは医療費のみで、入院時の食事代や差額ベッド代、公的医療保険の対象外の治療費などは対象外です。
②傷病手当金
傷病手当金は、病気やケガのために労働ができなくなった被保険者に対して支給される制度であり、被保険者の生活を保障する目的があります。
項目 | 内容 |
---|---|
支給の条件 |
|
支給期間 | 通常は支給開始日から1年6ヵ月 |
計算の基準 | 支給開始日以前の標準報酬月額の平均に基づく |
資格喪失後 | 1年以上の被保険者期間があれば継続支給が可能 |
参照:病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)|全国健康保険協会
傷病手当金は、簡潔に言うと、業務外の病気やケガによって仕事に就けなくなった場合の経済的支援として提供されます。
支給の条件や期間、他の給付との関連性など、様々な要点が考慮されるため申請の際には必要な書類や条件をしっかりと確認する必要があります。
③障害年金
障害年金は、病気やケガにより日常生活や仕事が制限される場合に受け取ることができる年金制度です。
この年金には「障害基礎年金」と「障害厚生年金」があり、それぞれ異なる条件や納付状況に基づいて受給が可能です。
障害年金を受け取るための条件や要件が設定されており、障害者手帳の有無やその等級は、障害年金の認定審査の際の参考となります。
障害年金は、主に20歳から65歳までの現役世代も受給が可能で、様々な病気やケガが受給の対象となります。
項目 | 説明 |
---|---|
種類 |
|
受給資格 | 病気やケガで日常生活や仕事に制限がある人 |
対象年齢 | 20歳から65歳まで |
納付要件 |
|
受給対象疾患 | 事故障害、生まれつきの障害、精神疾患、がん、難病、糖尿病など広範にわたる病気やケガ |
参照:障害年金|日本年金機構
障害者手帳は障害年金の受給とは別の制度であり、その等級や有無は障害年金の認定において参考となるものです。
年金の認定時には、障害者手帳の等級と障害年金の等級が一致しないことも多々あります。
死亡に関する手当金・補助金
前の章では、怪我や病気など医療に関する補助金をもらう方法を解説しました。
続いて死亡に関する補助金をもらう方法について見ていきましょう。
その方法は2つあります。
- 埋葬料・葬祭費
- 遺族年金
基本的には、家族が亡くなったときには補助金が出されます。
特に家計を支えている人が亡くなってしまうと、残された家族が路頭に迷ってしまう可能性があるので、さまざまな補助が出るようになっているのです。
これらもひとつずつ見ていきましょう。
①埋葬料・葬祭費
項目 | 埋葬料 | 葬祭費 |
---|---|---|
対象健康保険 | 社会保険(協会けんぽ等) | 国民健康保険 |
支給対象者 | 業務外で亡くなった正社員や公務員 | 75歳未満の自営業者や個人事業主 |
支給金額 | 一律5万円(付加給付有) | 3万〜7万円(自治体による) |
申請期限 | 亡くなった日から2年以内 | 変動(具体的な期限は確認が必要) |
申請書類の例 | 健康保険証、事業所の証明など | 健康保険証、葬祭を行った証明など |
埋葬料は、社会保険に加入していた業務外で亡くなった被保険者の埋葬や葬儀の補助金として受け取れる給付金です。
一方、葬祭費は国民健康保険に加入していた75歳未満の被保険者や後期高齢者医療制度に加入していた75歳以上の方の埋葬や葬儀の補助金として受け取れる給付金です。
埋葬料の支給額は一律5万円ですが、葬祭費の支給額は3万円から7万円と自治体によって異なります。
申請期限や必要な書類に関しては、具体的にどちらの給付を受けるかによって異なるので、それぞれの健康保険組合や自治体に確認が必要です。
②遺族年金
遺族のタイプ | 遺族基礎年金 | 遺族厚生年金 |
---|---|---|
若齢遺族(子あり) | 支給される(子が18歳に達するまで) | 3/4の金額が支給(条件により変動) |
若齢遺族(子なし) | 支給状況は年齢による | 最大3/4の金額+加算(条件により) |
高齢遺族※65歳以上 | 支給されない | 3/4の金額が支給 |
参照:遺族年金|日本年金機構
遺族年金は、国民年金や厚生年金の被保険者が亡くなった際に、その人に依存して生計を立てていた家族に支給されるものです。
この年金には「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2種類があり、どちらか一方または両方が支給されることがあります。
遺族年金の支給は、亡くなった方の年金の納付状況や遺族の年齢、子供の有無などの条件によって変わります。
特に、子供がいる場合や遺族の年齢が特定の範囲内である場合など、受給条件や受給額に違いが見られます。
また、遺族基礎年金は国民年金の一部として20歳以上のすべての国民が対象となりますが、遺族厚生年金は会社員や公務員など厚生年金の加入者の遺族が対象となります。
労働に関する手当金・補助金
前の章では、死亡に関する補助金をもらう方法について解説しました。
続いて労働に関する補助金について見ていきましょう。
この章で解説するのは、次の補助金です。
- 失業保険
- 職業訓練受講給付金
- 教育訓練給付金
- 介護休業給付
- 高年齢雇用継続給付
ひとつずつ解説していきます。
①失業保険(失業手当)
失業保険(失業手当)は、雇用保険の基本手当のことを指します。
雇用保険の被保険者が、定年や倒産、契約期間終了などを理由に離職した際、再就職するまでの間に支給される手当です。
※令和5年8月1日改正
離職時年齢 | 賃金日額の上限額(円) | 基本手当日額の上限額(円) |
29 歳以下 | 13,890 | 6,945 |
30~44 歳 | 15,430 | 7,715 |
45~59 歳 | 16,980 | 8,490 |
60~64 歳 | 16,210 | 7,294 |
上記の上限金額以内で、賃金日額に応じた給付率(45~80%)での支給となります。
賞与は含まれない点に注意してください。
②職業訓練受講給付金
項目 | 詳細 |
---|---|
制度の目的 | 早期就職の支援 |
対象者 | 雇用保険を受給できない方、一定額以下の収入の在職者等 |
給付金 | 最大月10万円 |
受講内容 | 無料の職業訓練 |
サポート期間 | 訓練開始前~訓練終了後 |
特例措置の期間 | 2023年3月末まで |
特例措置の内容 | 転職せずに働きながらの訓練受講が可能 |
職業訓練受講給付金は、雇用保険を受け取ることができない方を対象とした早期就職を支援する制度です。
この制度の下では、月10万円の生活支援の給付金を受け取りながら、無料で職業訓練を受講することが可能となっています。
特に、ハローワークが訓練開始前から終了後までの期間、求職活動をサポートしています。
2023年3月末までの特例措置として、職場を変えずに働きながらスキルアップを目指す方もこの訓練を受けることができるようになっています。この制度は、再就職や転職を考えている方にとって、非常に役立つものとなっています。
③教育訓練給付金
項目 | 専門実践教育訓練 | 特定一般教育訓練 | 一般教育訓練 |
---|---|---|---|
目的 | 労働者の中長期的キャリア形成 | 労働者の速やかな再就職及び早期のキャリア形成 | 雇用の安定・就職の促進 |
給付率 | 受講費用の50% | 受講費用の40% | 受講費用の20% |
年間上限 | 40万円 (資格取得等の追加で16万円) | 20万円 | – |
支給時期 | 訓練受講中6か月ごと | 訓練修了後 | – |
特記事項 | 初めて受講する失業者には特定の支援があり | – | 受講経費の20%で、上限10万円、下限4千円 |
教育訓練給付制度とは主体的な能力開発や中長期的なキャリア形成を支援する目的で設けられた雇用保険の給付制度です。
教育訓練の費用の一部を支給し、45歳未満の離職者に対しては、基本手当が支給されない期間についても、諸経費の支援が行われます。
支給要件期間は、受講開始日までの同一事業主の適用事業での雇用期間を指します。
前の事業所での被保険者資格取得期間も通算可能ですが、空白期間が1年超えると通算されません。また、以前の教育訓練給付金の受講開始日より前の期間は通算しません。
④介護休業給付金
介護休業給付とは、要介護になった親や家族の介護をするために、介護休行業を取得した結果、賃金が低くなってしまった場合に支給されるものです。
この給付を申請すると、賃金の2/3をもらうことができ、最長で93日分まで支給されます。
1回支給されたら終わりではなく、上限3回まで支給可能です。
また介護休業給付を受給中にも賃金が発生している場合は、介護休業給付は減額されます。
介護給付の受給資格を得るには、次の条件を満たす必要があります。
- 雇用保険の被保険者であること
- 介護休業開始前2年間で、1ヶ月の間に11日以上出勤している月が12ヶ月以上あること
- 介護休業開始時に1年以上同じ事業者の元で働いている
また支給対象の介護者は次の通りです。
- 配偶者
- 両親(配偶者両親含む)
- 子
- 祖父母
- 兄弟姉妹
- 孫
これらの人が怪我や精神疾患によって2週間以上の介護が必要になった場合に受給することができます。
⑤高年齢雇用継続給付
高年齢雇用継続給付は、60歳以上65歳未満の被保険者が、60 歳時点での賃金と比べて75%未満に低下したときに申請できる制度です。各月の賃金の最大15%にあたる給付金が受け取れます。
雇用保険(基本手当等)を受給していない方向けの「高年齢雇用継続基本給付金」と雇用保険(基本手当等)の受給中に再就職した方向けの「高年齢再就職給付金」があります。
高年齢再就職給付金 | 再就職手当 |
1年または2年かけて支給(※) (支払われた賃金×最大 15%) |
一括で支給 (基本手当日額×残日数×60%または 70%) |
賃金が変動すれば給付額も変化 | 再就職後の賃金変動に影響されない |
年金と併給調整される | 年金と併給調整されない |
※基本手当の支給残日数が 100 日以上 200 日未満の場合は1年間、200 日以上の場合2年間が支給期間となります。
支給時にいずれかの制度を選択する必要があり、支給決定後は取り消しや変更ができない点に注意しましょう。
申請すればもらえる手当金・補助金をおさらい
この記事では、さまざまな状況に応じてもらえる補助金について解説しました。
最後に、記事内で紹介したものをおさらいしてみましょう。
出産時、子育てに関するお金をもらう方法は次の通りです。
- 出産育児一時金
- 出産手当金
- 児童手当
- 子育てファミリー世帯居住支援
怪我や病気など医療に関するお金をもらう方法はこの3つ。
- 高額療養費制度
- 傷病手当金
- 障害年金
死亡に関するお金をもらう方法は次の2つです。
- 埋葬料・葬祭費
- 遺族年金
最後に、労働に関するお金をもらう方法はこの5つがあります。
- 失業保険
- 職業訓練受講給付金
- 教育訓練給付金
- 介護休業給付
- 高年齢再就職給付金
この記事で紹介したもの以外にも、自治体によってさまざまな補助金が設けられています。
困ったことがあったら、受給できるものがないかを調べておきましょう。